一昨年の今頃、小雪混じりの夜、歯科助手のアルバイト面接のために一人の高校生がクリニックにやってきた。
卒業を控えた3年生で、それまでの間、ウチで働きたいとのことだった。
緊張した面持ちで、質問に焦って言葉がつかえながらも、一生懸命真面目に答える姿が印象的だった。
もともとイラストが好きで、卒業後、デザインを勉強するため大阪に行く予定で、一人暮らしをするためのお金を貯めたいというのが応募の動機であった。
自分もこの職業を選ぶ前には、デザイン関連の仕事に就きたかったことから、応援の意味も込め二つ返事でOKを出した。
しかしながら、
ご存じのとおり、その後、未曾有のコロナ渦に世界中が見舞われ、大阪行きの予定は白紙になった。
数度の緊急事態宣言が出される中、厳格な感染防止策をとっているとはいえ医療現場、一頃、歯科は危ない職場であるとのメディア報道もされたりした中(決してそのようなことはなかった)、これに怯まず、働き続けてくれた。
それから、約1年半、今も変わらずメモ帳片手に真面目にコツコツと働き、スタッフ皆にも可愛がられる一員になった。
今夏、その彼女より歯科衛生士専門学校に入学したいという申し出があった。
予期せぬ突然の言葉に大変驚いた。
ほぼ職に就いてからこれまでずっと続いた戒厳令下ともいえる診療の場、”感染をさせない、しない”が至上命題となっているクリニック内では感染防止策のための仕事が膨大に増え、時には大変厳しく指導することもあった。
そのような中、抱いていた進路を変え、この仕事を選びステップアップすることを望む決意に脱帽するとともに、クリニックを預かる身として本当に嬉しく思った。
11月17日、広島県高等歯科衛生士専門学校の入試試験が行われた。
昨日、合格の報が届く。
クリニックに冬桜が一輪咲く。
冬桜の花言葉…『冷静』
冬の寒く澄み切った空に、凛とした姿で咲くことが由来となりました。
”HORTI by GreenSnap” HPより
これより先、幾多の試練、迷いがあろうとも、きっと、”冷静”に”凜”として臨まれることでしょう。
心よりおめでとうごさいます。