本年6月10日、広島地方気象台が中国地方は梅雨入りしたと見られると発表した。
以降、現在までぐずついた天気が続いている。

雨が降る、降る前になると歯の不調を訴えられる患者さんをこれまで何人か経験したことがある。
このメカニズムとしては、気圧との関係が示唆されている。

歯痛と気圧との関係については、清書に示されているものとして、
”気圧性歯痛(barodontalgia)”が代表的である。

気圧性歯痛とは、体外環境の圧の変化により引き起こされる歯痛のことをいい、主に低圧環境下にさらされる航空パイロットに見られる現象と説明されている。
特に、その原因として歯髄(歯の神経)、歯周疾患ならびに上顎洞炎(副鼻腔の炎症)があげられている。

2015年、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科(歯)予防歯科学分野の森田学教授、竹内倫子助教らの研究グループは、「慢性歯周炎が急性化するのは気象変化後1~3日である」ことを報告した。

 

慢性的な歯周炎が存在する場合、気圧の低下や気温上昇等の影響を受けやすく、その急性化は気象変化後1~3日に起こりやすいことを認めた。メカニズムの詳細については、未だ不明であるものの、気圧や気温の変化がホルモン分泌や循環器系に影響して、炎症の急性化に関与しているのではと推察している。

Takeuchi N, Ekuni D, Tomofuji T, Morita M. : Relationship between Acute Phase of Chronic Periodontitis and Meteorological Factors in the Maintenance Phase of Periodontal Treatment: A Pilot Study., International journal of environmental research and public health 12, 9119-9130, 2015.

 

上述の現象は主に天候が変化した直後からの現象、説明であるが、
臨床で経験する患者さんの中には、雨等が降る前、気圧が変化した直後よりそれを察知したように体調の不調を認める方がおられる。

気象病(meteoropathy)と称されるこの病態は、めまい、頭痛、吐き気、疲労感、痛み等の自律神経の不調和によりみられる一連の症状が発現するといわれ、内耳と自律神経系との関連が考えられている。

自律神経系の不調和と歯痛の発現には関連があることから、気象病と呼ばれるこの病態にもその一因があるのかもしれない。

未だ、痛み発現メカニズムの詳細が不明な歯痛は存在する。

晴れの日が待ち遠しい。