今日は歯科衛生士(以下、衛生士)の必携器具ともいえるスケーラーについて、その概説と起源について記してみます。
歯周病とスケーラーについて
歯周病は、細菌の感染によって引き起こされる炎症性疾患で、歯の周りの歯ぐき(歯肉)や、歯を支える骨などが溶けてしまう病気です。
この発症原因となる細菌(歯周病原因菌)は、不十分なブラッシングによって歯の周り付着する歯垢(=プラーク、バイオフィルム)の中に存在しています。
この歯垢は時間が経つにつれ、唾液中のカルシウムやリン酸によって石灰化を起こし、石のように硬く、歯の表面に固着し、歯磨きでは容易に取り除くことが出来ない歯石になります。歯石自体には、病原性はないといわれるものの、その表面が粗造なために新たな歯垢の付着を促しやすく、除去することが望ましいとされます(詳細は下記の記事に出ています)。
こうした歯垢や歯石を、歯科医師・歯科衛生士等の専門家により除去することをスケーリングと呼び、使用する器具(機材)をスケーラーと呼びます。

スケーラーの種類
スケーラーは大きく、1)手用スケーラー、2)機械式スケーラー(超音波スケーラー、エアースケーラー)に分けられます。
各々の器具(装置)には利点・欠点があり、治療ケース・手順や使用する部位・方法により使い分けているのが一般的です。
下記に各々の特徴を示しました。
歯周病はいつから認識されていたのか?
●紀元前における歯周病と考えられる症状の記述
紀元前5000年頃、人々は歯周病に悩まされていたという記述が残されています。
アシュルバニパル王立図書館には、歯周病の兆候や初期文明で使用されていた治療法を示す情報が記載された数千枚の粘土板が所蔵されています。
その中には、「歯が緩んで痒くなったら、ミルラ、アサフェティダ、オポパナックスと松脂を混ぜたものを、血が出るまで歯に塗り、回復させる」とされています。
アッシュルバニパルの図書館(アッシュルバニパルのとしょかん、Library of Ashurbanipal, Royal Library Ashurbanipal)は、メソポタミア北部のニネヴェのクユンジク(Kuyunjik)の丘に紀元前7世紀に設立された図書館で、王室の記録、年代記、神話、宗教文書、契約書、王室による許可書、法令、手紙、行政文書などが発見されている。遺物の文書記録(粘土板)の殆ど(30,943 点)は、大英博物館(ロンドン)に保管されている。
*Wikipedia『アッシュルバニパルの図書館』より引用
●ヒポクラテスが記した歯周病の病因と全身疾患との関連性
ペルシャ医学のはじまりとスケーラーの起源について
アラビア医学の中で生まれたスケーラーの原型

*上記画像は、『Ring, M.E. : Dentistry, an Illustrated History. Abradale Press, New York, 145., 1985.』より引用
アラビア医学の概説やアルブカシスの歯科に関する偉業が下記のブログによくまとめられています。
ご興味のある方はご一読をお勧めします。
参考文献
- Zlata Brkić, Verica Pavlić : Periodontology – the historical outline from ancient times until the 20th century., Military-medical and pharmaceutical review 74(00):169-169, 2016.
- Ring, M.E. : Dentistry, an Illustrated History. Abradale Press, New York, 145., 1985.
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