前回の記事で、衛生士の仕事(スケーラー)で触れた『歯石』について記します。
歯石はどのようにつくられる?
歯石は唾液によりつくられるのではなく、歯垢(以下、プラーク)の中の細菌によってつくられます。
プラークは歯と細菌が付着することより始まります。プラーク中の細菌は、様々な種類の細菌が塊となって、集落のような物を形成しています(下図①)。
2週間ほで、細菌は死に固く石灰化していきます。石灰化した細菌同士が集まり、歯石の芯となります(下図②)。
これに、新たな細菌が付着して、死に…。という具合に歯石は少しずつ大きさを増していきます。
プラークの石灰化に関連が深い細菌
プラーク中の細菌の中でも、歯石に関連が深いとされるのは、コリネバクテリウム・マツルショッティ
(Corynebacterium matruchotii)といわれます。
他、放線菌、連鎖球菌も原因になるとされます。
唾液中のPHが上昇して口の中がアルカリ性になると、石灰化が促進され、歯石は大きくなります。細菌による石灰化、すなわち歯石形成を助長しているといえます。
細菌は体の内部(菌体内)、外部(菌体外)においても石灰化します。
歯石の構成成分
歯石の構成要素は、およそ80%が無機質、20%が有機質と水よりなるといわれています。
無機質の構成は、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム等からなり、有機質はそのほとんどが細菌の死骸による菌体です。この死んだ菌体の中にも毒素(内毒素という)が含まれるといわれますが、プラーク中のものに比較して弱いといわれています。
歯石の形成に及ぼす要因
歯石の形成は、個人差があることは勿論のこと、お口の中の場所によっても大きく異なります。
歯石の形成に影響を与える要因には、年齢、性別、民族的背景、食事、口腔衛生、細菌性プラークの組成、遺伝的因子、専門的ケアの有無、身体障害、全身疾患、喫煙、薬物および薬剤の使用などがあります。
歯肉縁上歯石と歯肉縁下歯石について
歯石も歯の表面の付着する部位により、その名称と特徴が異なります。歯肉の縁より上の表面部分に付着する歯石を歯肉縁上歯石といい、歯肉縁より下方、特に炎症所見がみられ歯と歯肉の接合部の溝(歯周ポケット)に見られるものを歯肉縁下歯石と呼びます。
歯肉縁上歯石は、淡黄色をしていて、多数の歯にまたがって大きくなる傾向があります。歯の表面と付着する力は一般的に弱くスケーリングでとりやすい特徴があります。
歯肉縁下歯石は、褐色、暗褐色のものが多く、非常に硬く、また、歯の根の表面にあるセメント質と付着しているためスケーリングでも容易にとりのぞくことが困難です。
その他、上記2種の歯石の違いを下記のテーブルにまとめています。
特徴 | 歯肉縁上歯石 | 歯肉縁下歯石 |
---|---|---|
色調 | 淡黄色 | 暗褐色 |
構造 | 層状 | 無構造 |
硬さ | もろい | 硬い |
由来 | 唾液 | 歯肉溝滲出液、血液 |
好発部位 | 唾液腺開口部ー下顎前歯部舌側面、上顎大臼歯頬側面 | なし |
歯石の存在=プラークの存在、取り除く意義をよく理解しましょう
歯石があるということは歯周組織に炎症を起こす原因となるプラークが存在するといってよく、その除去の必要性はいうまでもありません。
歯石はご家庭で使用する歯ブラシはとりのぞくことができません。
歯科医院において適切な指導(ご自身の口の中の歯石のある場所や炎症状況をよく聞いて確認し、この部位の清掃方法を指導してもらう)、特殊な器具によりしっかり歯石を取り除き、再び歯石がつきにくいように歯の表面を研磨してもらうようにしてください。
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