虫歯(う蝕)の病態について

虫歯(専門的な言葉では、う蝕といいます)と聞くと、おそらく下の図のようなイメージを抱かれる方がほとんどでしょう。

虫歯?のイメージ図

しかしながら、虫歯(う蝕)は細菌が歯をパクパクと食べて起こるわけではありません。

う蝕の定義は、次のようになっています。

齲蝕 うしょく dental caries dental decay

口腔内細菌の関与の下,歯質(エナメル質,象牙質,セメント質)の無機塩の脱灰と有機質の溶解を伴う,歯質の崩壊を主な変化とする疾患である。

*新常用歯科辞典より

平たく言えば、虫歯という病変は、細菌が作り出す酸により、歯の構成成分である無機質が主に溶け出していくことです。

この現象を、もう少し説明してみます。

歯の脱灰と再石灰化という現象

エナメル質を例に図解したものが下の図です。

歯の脱灰現象

エナメル質は、その96%がハイドロキシアパタイトと呼ばれるリン酸塩の結晶(六結晶)が集まってできています。
炭水化物、糖質を分解してバイオフィルム中にいる細菌が作り出す酸(H)により、ハイドロキシアパタイトはカルシウム(Ca2+)とリン酸(PO42-)に分解して溶け出してきます(化学式)。この現象のことを”脱灰”といいます。

これとは、まったく反対となる現象があります。

それは歯の”再石灰化”です。
唾液には、酸を中和する能力があり、これにより溶け出たカルシウムとリン酸が再び歯の中に取り込まれます。つまり、ミクロの目で見た歯の修復現象です。

歯の脱灰と再石灰化

この歯の周りの脱灰再石灰化という現象は、ミクロ(イオン)のレベルで常に行われています。

虫歯の発症

虫歯は、歯の脱灰現象が再石灰化を上回るときに発現します。
この脱灰が引き続いて起こると歯の構成組織が崩壊していき、よくいう”虫歯の穴(う窩と呼びます)”ができていきます。

虫歯の進行分類とその表記について

虫歯の進行度は、虫歯を意味する英語のCaries(カリエス)の頭文字を取った「CO、C1~C4」で表し、その重症度を数字により示しています(数字が上がるほど虫歯が進行した状態)。

虫歯に関する用語の補足

Caries(英語)は、ドイツ語で虫歯を表すKariesに由来しています。
なお、虫歯の一般的な英語表現では、「Caries」はあまり用いられず、「cavity」、「tooth decay」、「decayed tooth」が良く使われます。

「CO」は、”シーゼロ”と呼ぶのではなく、”シーオー”と読みます。
”経過観察下の虫歯が疑われる歯”を表す英語、””Questionable Caries under Observation”の頭文字を取ったものとされ、健診、カルテでの表記には「要観察歯」が使われます。

虫歯の進行度と表記

虫歯の進行度とその治療方法について

虫歯の進行度により、経過を見ていくケース、歯を削らなければならないケース、抜歯を余儀なくさせるケースまで及びます。

以降、COからC4までの虫歯の特徴、症状、治療について記していきます。

CO: 初期の虫歯・要観察歯

CO:要観察歯

COは、虫歯の前駆状態で、”ホワイトスポット”と呼ばれるエナメル質表面の透明さが失われ、部分的に白く濁ったような状態です。
通常、歯を削らずに、また痛みのない治療ができます。

自覚症状

  • 歯がしみる等の痛みはとくにありません
  • 白濁が確認されます

■C0の治療について

歯の清掃をして虫歯菌や汚れを除去した後、フッ化物を塗布して歯質を強化し、歯の再石灰化を促します。
その後、歯磨き方法を説明してから、自然治癒を期待して経過を観察します。一定期間後の検診で治癒していればその後の治療は終了です。
小児にはシーラントを施す場合もあります。

C1: エナメル質の虫歯

C1:エナメル質の虫歯

C1は、エナメル質が脱灰により溶け始めた状態の虫歯です。
症状がほとんどないために歯科医院の診査で見つかることが多いです。
歯を削らずに、また痛みのない治療ができます。
虫歯の進行を阻止、再発の予防、管理方法をよく学ぶことが大切です。

自覚症状

  • 歯がしみる等の痛みは特にありません
  • 歯の一部に穴や茶〜茶褐色の変色がみられことがあります

■C1の治療について

歯の清掃をして虫歯菌や汚れを除去した後、フッ化物を塗布して歯質を強化し、歯の再石灰化を促します。
その後、歯磨き方法を説明してから、自然治癒を期待して経過を観察します。一定期間後の検診で治癒していれば治療は終了です。
子どもの場合はシーラントを施す場合もあります。

C2: 象牙質の虫歯

C2:象牙質の虫歯

C2は、象牙質に達っする虫歯です。
歯髄(歯の神経)に近づくにつれて歯のしみる症状や痛みを感じるようになります。
象牙質はエナメル質より柔らかいので虫歯の進行が早く、早急な治療を必要とします

自覚症状

  • 冷たいもの、甘いものを口に含むと痛む
  • 自覚症状はないものの、X線を撮ると内部(象牙質)まで広がり進行している場合がある

■C2の治療について

虫歯に侵された象牙質を除去して詰め物もしくはかぶせをしていく治療が基本です。
MI治療の概念を基に、健全な歯質をできるだけ削らないように心がけています。
3Mix法は、3種類の抗菌剤(メタロニダゾール、ミノサイクリン、シプロキサン)を混ぜて虫歯部分に貼付して、虫歯細菌を無力化する治療法です。歯の切削量を低減できるほか、歯髄(歯の神経)を温存させることが可能になることがあります(保険外の治療になります)。

保険診療では前歯および臼歯で虫歯の範囲が狭い場合にはレジン(プラスチック)を詰める治療、奥歯で虫歯の範囲が広い場合には、硬質のレジン、銀色の修復物(金銀パラジウム合金)で修復していきます。部分的な詰め物は”インレー”、かぶせは”クラウン”といいます。
自費診療では歯の色に合わせたセラミックスや生体との馴染みの良い金属ゴールドなどの材料を使った治療を行います。

C3: 歯髄(神経)に達する虫歯

C3:歯髄に達する虫歯

C3は、虫歯が歯の神経(歯髄)に達した大きな虫歯です。
冷たいもの、温かいものがしみ、歯髄炎(神経の炎症)を起こしていると、ズキズキと激しく痛むことがあります。



自覚症状

  • 冷たいもの、あたたかいもので歯がしみる
  • 虫歯の穴に食べ物がはさまるとズキっとした痛みを感じる
  • 刺激がなくても、痛み出すことがある

■C3の治療について

基本的に、虫歯を綺麗に取り除き、抜髄処置と呼ばれる歯の神経の治療(根管治療)を行います。
虫歯が歯髄まで到達しているものの、感染が疑われない場合には歯髄保存治療(MTAセメントと呼ばれる特殊なセメントを用いる)を行い、歯髄を取らずに治療を行うケースがあります。
保険診療では前歯で虫歯の範囲が狭い場合にはレジン(プラスチック材)を詰める治療、歯のかぶせ(クラウンと呼びます)として硬質のレジン(プラスチック)、銀色の修復物(金銀パラジウム合金)を用いて修復していきます。部分的な詰め物は”インレー”、かぶせは”クラウン”といいます。
自費診療では歯の色に合わせたセラミックスや生体と馴染みの良い金属ゴールドなどの材料を使った修復を行います。

C4: 歯冠(歯の頭)が崩壊した虫歯

C4:歯冠が崩壊した虫歯

C4は、虫歯が歯の神経(歯髄)に達した大きな虫歯です。
歯髄(神経)は壊死している状態が多く、冷たいもの、甘いものによる誘発的な痛みや自発痛はないことが多いです。
細菌感染により歯根の先端部に炎症や膿の袋ができていることがあり、疲れや睡眠不足により免疫力が落ちると痛み出すことがあります。



自覚症状

  • 通常は痛みを認めることは少ない
  • 歯根部に感染がある場合、免疫力が衰えると痛みや腫れを突然認めることがある

■C4の治療について

歯の保存が可能であると判断された場合には、根管治療を行います。なお、歯根の先端に膿の袋ができている場合には、術中の治療経過をみながら行っていくため、治療期間が長くなる場合が多いです。
歯根は残っているものの虫歯が歯肉の下部、深くまで及んでいる場合には、虫歯をとりのぞいた後に、健全な歯質を歯肉上に出すために臨床歯冠延長術・挺出術と呼ばれる方法により対処して歯の保存を試みることがあります。
虫歯が進行し、根管治療の後に歯根の長さが十分でない場合(おおよそ歯根の長さが10㎜以下)や歯根の先端にできた膿の袋(歯根嚢胞)が大きいケースなどは、残念ながら抜歯を行うことになります。

当クリニックでの虫歯の治療方針

当クリニックでは、MI治療に準じ、歯をできるだけ削らない、抜かない虫歯の治療を実践しています。

QOL向上維持を目指した歯科治療当クリニックの一般歯科(むし歯・歯周病へ戻ります。

MI治療トップ画像MI(ミニマルインターベンション)治療について詳しく記載しています。
是非、ご一読ください。