昨日、広島市歯科医師会の任により医療事務・歯科助手コースを受講する学生講義のため広島YMCA専門学校へ行ってきました。
もう10年以上、『小児歯科学』の授業を担当しています。
限られた時間の中で、すべての内容を説明、消化することは困難です。
少しでも興味をもってもらえるよう、学生さんが将来的に”お母さん”になった時に知っておいてほしい(知っておくと得するような)講義内容に絞っています。
流石、”お母さん(ママ)になった時に必要”という文言を講義中に話すと、学生さんの聴講する姿勢も違ってきます。
今日は、講義の中で利用している『6歳臼歯がはえてきたときの注意点と歯ブラシの使い方』について説明します。
「6歳臼歯」とは、永久歯の中で一番最初にはえてくる”第一大臼歯”の別名です。
概ね、6歳頃にはえてくるのでこう呼びます。
この6歳臼歯は、お口の歯の中でも非常に重責を担っていて、歯列と呼ばれる歯並びの起点になるとともに、噛み合わせの要の場所に位置し、この部位での咬む力も一番強いです。
大変重要な役割を担っている6歳臼歯ですが、様々な要因により虫歯になりやすいというリスクを背負っています。
下の図1に示すとおり、様々な不利な点があります。
- 6歳臼歯のはえ始めは、乳歯の一番奥になり手前にはえている乳臼歯との段差により歯ブラシが届きにくい
- 歯の形態(咬む面の溝が深い等)が複雑で汚れがたまりやすい
- 6歳臼歯は、上下の顎で時期が異なって映えてくるので、ブラシのあて方を各々工夫しないと汚れを綺麗にとることがむずかしい
- はえてくる時期には、お母さんの手を離れていることが多く、むし歯になっていること気づかない等の理由がある。
また、下記のようなこの時期に特有な行動学的理由により、むし歯になりやすいといわれています。
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6歳前後には友だちもできて、親の目が届かない時間も増えてくるため、行動・食物の管理が十分にできにくく、お菓子をとる機会も多くなりがちである
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自分の思い通りにしたい時期で、母親による歯磨きの指導、手伝いを嫌がる
以下に、はえ始めの6歳臼歯の様子と、具体的な歯の磨き方について示したいと思います。
図2は、歯ブラシを渡し十分に歯を磨いたと思われたあとに歯垢染色液で染め出したものです。6歳臼歯の咬む面が歯垢染色液で染まっている(磨けていない)のが解ると思います。
このように6歳臼歯のはえはじめの時には歯ブラシをいれる角度を少し変えてアプローチします。
図3のとおり、お口を開ける量を減らして、ブラシの柄をやや水平気味にしすると、毛先を6歳臼歯に届きやすくなります。
6歳臼歯は先に述べたように非常に重要な歯です。
お母さんは、その大切さをお子さんに良く教えてあげて、子供さん自身が歯を守る意識を持ってもらえると大変素晴らしいことです。
この”6歳臼歯のはえはじめのブラッシングのむずかしさ”は、その動機付け、気づきとなるなる最適な場面であると考えます。
是非とも、お子さんとともに発見、取り組んでみてください。